コトコトと鳴く扉を開けたら鮮やかな色彩が飛び込んできた。
わあ、と零れた声の大きさに、自分でもびっくりしてしまって。
どきどきする胸を手で押さえながら、だれ、と小さく投げた問い。
自分の顔より大きなそれから、ひょいと覗いたあたたかな色。
馴染んだ鴇色にほっとして、いらっしゃい、とようやく言えた。
─おひさま─
お土産だよと手渡されたのは僕よりずっと背の高いもの。
太い茎と、大きな葉っぱと、お日さまみたいなきれいな花と。
受け取ったそれはずっしり重くて、わあ、と今度は小さな声で。
お花の部分をよく見たいのに、ふらふらしてうまくいかなかった。
「僕の顔より大きいのかな」
「そうだね。俺の顔よりも大きいと思うよ」
そう言って花と顔とを並べて、ほら、と月白は笑ってみせた。
今度は僕の手から花を取り上げ、見易いようにしてくれる。
目の前にあるその花は、やっぱりずっと大きくて。
花びらの黄色が眩しくて、ほんのちょっとだけ目を細めてしまった。
僕の背丈より大きな花を生ける花瓶が見付からない。
仕方がないからバケツに入れて、壁に立て掛けるみたいに置いた。
少し傾いてしまっているけど、どうにか倒れずにいてくれる。
ふう、と小さく息を零して、ありがとう、と相手に言った。
「気に入ってくれた?」
「うん!」
「よかった」
ふふ、と笑う声がして、それがなんだかくすぐったい。
首を竦めて笑みを零せば月白の腕が伸びてくる。
くしゃりと髪を掻き回して、頬を撫ぜて、耳を擽って。
その度に僕はきゃあきゃあと、大きな声で笑ってしまった。
ふと見上げた先、鴇色の髪の毛。そこに眩しい黄色が一枚。
どうしたの、と尋ねる相手に、じっとしててと一言告げて。
背伸びをしながら腕を伸ばして、黄色い花びらを手の中に。
「きれいだね」
「うん。そうだね」
「お日さまみたいに眩しいね」
手の中の花びらに指先で触れて、何度も何度もそうっと撫ぜる。
すべすべしていて、ひんやりとして、小さいけれどやっぱり眩しい。
本に挟んで押し花にしよう、とか、押し葉なの栞にしようかな、とか。
そんなことを考えてたら、小さな小さな笑い声。
喜んでくれて良かったと言って、お日さまみたいに月白は微笑った。
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