四角く切られた窓越しの景色、きらきら輝く子供の目。
夏の暑さは薄れて消えて、吹きゆく風に秋の色。
寒くない? と小さく問うと、ふるりと首を横に振る。
きもちいいねと微笑む声に、頷き返して目を細めた。










―落葉―










さくさくと鳴く枯れ葉の道、ひらりはらりと舞い落ちる。
その一枚を追うようにして手に提げた荷へと目を遣った。

城を抜け出し街へ出て、ふと目に留まった甘い菓子。
つやつやとした栗の甘煮と鼻を擽る甘い香り。
秋らしいそれを買い求め、あの子の顔を思い浮かべた。

丸くなる目、綻ぶ笑顔、嬉しそうに弾む声。
気に入ってくれるといいな、なんて、身勝手な思いを内に抱いた。





扉を前に足を止め、慣れた手つきでトントン叩く。
はぁいと響いた声を聞き、土産をこっそり背中に隠して。

開かれる扉、出迎える笑顔。
いらっしゃい、と招き入れられ、菓子の箱を差し出した。
丸くなった目が瞬いて、なに? と声なく視線で問われる。

「栗を使ったケーキなんだって。美味しそうだったから買ってきちゃった」

玄冬と一緒に食べたくて、と目線を合わせて囁いた。
くすぐったそうに首を竦めて、ありがとう、って言ってくれる。





お茶淹れるねと言い掛けた口から「あ、」と小さな声が零れた。
どうしたの? と問いを返すと動かないでと制される。
俺の肩に軽く手を置き、ほんの少しだけ背伸びして。
頭の上を掠めるような、微かな感触がすぐに離れた。

「くっついてたよ」

そう言いながら差し出したのは黄金と赤に色付く木の葉。
いつの間に、と思う間もなく、子供の笑顔に息を呑む。
目をきらきらと輝かせ、きれいだね、と言葉を紡いで。
触れる手指は繊細に、まるで宝物に接するような。

あげるよ、と紡ぎ告げると嬉しそうに笑みを咲かせて。
弾む声で「ありがとう!」と、「大事にするね」と言ってくれる。
それが嬉しくて、嬉しくて。





ゆるゆるとした季節の廻りに耐え切れなくて目を閉じる。
肌を刺すよな風は冷たく、悴む手指の感覚は遠い。
ひらりはらりと舞い散る木の葉が頬を掠めて足元へ落ちる。
きれいに色付く木々の葉を見て、あの子が微笑ったような気がした。











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