なにを見てるの?
くい、と軽く袖を引いて、相手を仰いで問い掛ける。
きれいなきれいなその人は、いつものように笑ってくれた。
なんだと思う? と小首を傾げて。
まるでなぞなぞ遊びみたいだ。
─星結─
夜空に伸びる白い指。
その爪の先を目で追って、首を反らして空を仰いだ。
あれがね、と示される遠い光を食い入るようにじっと見詰める。
きらきら、ちらちら瞬いて、今にも零れ落ちそうな。
「寒くない?」
「だいじょうぶ」
「そ? ならいいけど」
言いながら、毛布でふんわり包んでくれる。
あったかくて、やわらかくて、お日様のいい匂いがした。
「あったかい?」
「うん!」
星を示した細い指が、ぽす、と頭の上に乗る。
そっと髪を伝っていって、頬を撫ぜて耳に触れた。
優しい笑顔、柔らかな声。
くすぐったさに首を竦めて、きれいなその手を捕まえる。
びっくりするくらい冷たくて、目を真ん丸に見開いた。
「あなたは?」
「うん?」
「寒く、ない……?」
真っ白い頬に手を伸ばす。
指先と同じくらいに冷え切っていたから、
背伸びをしながら両手を添えて、そっとそっと包み込んだ。
少しでも、寒くないように。
「……玄冬がいるから、あったかいよ」
きれいなきれいな、大好きな笑顔。
きゅう、と両腕で抱き締められて、すぐに見えなくなってしまったけど。
くすくすと笑うその息が、首筋に掛かってくすぐったい。
苦しいよ、と身じろいで、緩んだ腕をやんわり掴む。
一人で被るには大き過ぎる毛布の端を、白いその手に握らせた。
「半分ずつ、しよう?」
驚いたように目を丸くして、手の中の毛布をまじまじ眺めて。
もう一度きゅっと抱き締められた。
ありがと、という小さな囁きと共に。
二人で一枚の毛布に包まり、ひとつふたつと星を繋いで。
羊飼いの描いた絵を、いくつもいくつも教わった。
不意に白い指が止まって、お話をする声が途切れる。
どうしたの? と相手を仰げば、柔らかな笑顔が降り注いで。
「なにを、見てるの?」
首を傾げて、問いを投げる。
きれいなきれいな赤い眼が、僕を映しているのが見えた。
「何だと思う?」
優しい声は答えをくれなかったけど、
なんとなく、なぞなぞ遊びの答えが解った気がした。
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