窓から差し込む柔らかな光、ページを捲る微かな音。
寝そべる長椅子の端っこには、ふんわり穏やかな冬の色。
腹這いのまま顔を上げ、相手の顔をじっと眺める。

視線に気付いてこっちを見る目が穏やかな三日月に細められた。
かちりとぶつかる赤と青、どちらともなく微笑んで。
伸ばした手の先に触れた頬は真っ白なのに温かかった。










―目眩硝子―










どうかしたかと問う声に、なんでもない、と首を振る。
滑らかな頬に触れる指を滑らせ、相手の顔から眼鏡を攫った。
こら、と叱る声がするけど、その表情は柔らかい。
子供の悪戯を見守るような、優しくあたたかい目をしていて。

取り戻そうと伸ばされる腕を避け、ころりと寝返り天井を仰ぐ。
興味本位で掛けた眼鏡は軽い目眩を齎したけど。
二回三回と瞬いて、眉間に皺寄せ目を眇めた。

「度、きっついね」
「おまえの目が良いんだろう」
「なのかなぁ」

指の先で蔓を摘まみ、近付けたり、遠ざけたり。
世界がぼんやり滲むみたいで、気持ち悪いけど面白かった。





「ね、似合う?」

ことん、と小首を傾げて問うと、彼は一瞬目を丸くした。
それから柔な笑みを浮かべて、そうだな、と頷き返す。
読み掛けの本を閉じる音、目を悪くするぞと囁く声。

伸ばされた指が眼鏡に触れて、そっと目眩を奪われた。
くらりと揺れたのは視界か頭か、一度目を閉じそろりと開く。

僅かにぼやける視界の奥から、スイと近付く深い青。
掠めるだけの触れ合いに、ふふ、と小さく笑みを零した。

「眼鏡、ない方がいいみたいだね」
「時と場合によっては、な」





くすくす震える吐息の微笑、やさしく髪を撫ぜる指。
その袖を軽く引っ張って、もう一回、とキスをせがんだ。
カタ、と響いた小さな音は机に置かれた眼鏡の声で。

伏せた瞼をくすぐるように、そっと口吻けが落とされた。










リクエスト内容(意訳)
「玄救甘々」

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