細い身体を抱き寄せて、はあ、と小さく息を吐いた。
花白はこてんと首を傾げ、不思議そうな顔をする。
どうしたの? と問いを投げられ、なんでもないと頭を振った。
─寄り添う体温─
もこもことした服を纏う姿は見るからに温かそうだった。
けれどその実、あまり着込んではいない。
重ね着は好きでないらしく、本人が頑として拒んだからだ。
ざっくりと編まれた毛糸の隙から冷たい空気が入り込むらしい。
見た目は温かそうなのに、花白はふるりと身を震わせた。
「寒いか?」
「んー、ちょっとだけ」
言いながら両手を口元へ運び、はあ、と息を吐きかける。
やや余る袖に手の甲を隠し、指の先を擦り合わせた。
寒さで仄かに染まった頬と、どこか潤んだ緋色の眸。
身長差のため必然的に上目遣いになる視線。
きょとりと瞬くその度に、睫毛の影が頬に落ちる。
「もう少し厚着をしたらどうだ?」
「だって動きにくいんだもの」
むう、と唇を尖らせて、どこか不満気な顔で言った。
僅かに傾げた首の付根にぽつりと咲いた紅い花。
大きく開いた襟から覗く鎖骨の上にもまたひとつ。
束の間固まり目を逸らし、はあ、と深く息を吐く。
「……中にもう一枚着るとか、だな」
「これでも結構あったかいんだよ?」
そう言いながら身を預け、猫のように目を細めた。
ごろごろと喉を鳴らす音が聞こえてきそうな表情をして。
こうやって玄冬とくっついていれば、もっともっとあったかいよ。
甘えた声でそう囁いて、きゅう、と両腕を回してくる。
人の気も知らずに、と思いはしても、さすがに悪い気はしない。
渋々といった様子を装い、仕方がないなと苦笑する。
もこもことした衣服越し、重ねた肌が温かい。
網目の隙から肌に触れると、くすぐったいのか身を震わせて。
少し力を込めただけでも折れてしまいそうな細い身体を抱き寄せる
頬を寄せてくる花白の髪を慈しむようにそっと梳いた。
指から零れた髪一筋が真白い項をするりと撫ぜる。
ふふ、と零れた密やかな声に、そっと息を吐き出した。
リクエスト内容(意訳)
「むっつり玄冬。ギャグかほのぼの」
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