こてんと身体を預けたら、相手の肩が小さく跳ねた。
叱られるかな、なんて思って、心の準備をしていたのに。
はあ、と落ちた溜息ひとつ。同時に解けた僅かな緊張。
押し退けられずに済んだことに、あれ、と両目を見開いた。










─許された距離─










凭れることを許されて、ああどうしようと思考が巡る。
相手の肩に乗せた頭はどうにも上手く働かない。
離れた方がいいのかな、とか、だけど今更離れがたいな、とか。
そんな思いばかりがぐるぐると。

「タイチョーってさ、」
「なんだ」
「時々びっくりするくらい優しいよね」

視線を合わせず紡いだ言葉。
目だけで窺う相手の口元がひくりと僅かに引き攣った。
じっとりと睨む蒼い目が、吐き出す息と共に閉じられる。





「たまにはいいだろう」
「優しくしても、ってこと?」
「……ああ」

低く短く頷いて、ふいと顔を背けてしまった。
僅かに覗く耳の赤さが、なんだか少しおかしくて。

「じゃあ、もっと甘えてもいい?」

言うが早いかころりと寝転び、タイチョーの膝に頭を乗せた。
驚いたらしい丸い目が、零れそうなくらい見開かれてる。
なっ、と小さく漏らしたきり、続く台詞は紡がれない。
ぱくぱくと口を動かすだけで、意味を持つ言葉はひとつもなかった。





「顔、真っ赤だね」
「……、……煩い」

触ったら熱いかな、なんて思って、ふらりと手のひらを持ち上げる。
顎を撫ぜ、頬を辿り、熱を持った耳朶に指を這わせて。
長めの髪をそっと握ったら、その手を取られ引き剥がされる。

なぁに? と小首を傾げてみせても相手は何も言わなかった。
赤いままの頬、寄せられた眉、への字に引き結ばれた口。
ふ、と鼻から息を吐き、一度伏せた目を開ける。

取られた手のひら、緩く曲がった指の先。
微かな吐息を肌で感じて、ぴくりと小さく手が跳ねた。
少しだけ湿った感触に、顔に熱が集まるのを感じる。
触れた唇が離されて、蒼い眸が薄く笑った。










リクエスト内容(意訳)
「甘々」

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