いつもの笑顔を取り繕って、可愛い可愛い弟を抱く。
細い腰に腕を回し、華奢な片に顎を乗せて。
やめろ離せと暴れてるけど全力じゃないことは明らかだ。
くすくす笑って抱き締めて、白い首筋に唇を寄せる。
と、視線を感じて顔を上げたら空色の目に睨まれた。










─小さな愛─










「銀朱っ! これどうにかしろよ!」

じたじたと暴れる花白が高く訴える。
お兄ちゃんに向かって、これ、だって。
酷いなァ。

「なぜ俺に振る?」
「だっておまえの管轄だろ!?」

いつの間にそうなったんだ。
不満気にそう言いながら、俺の腕をしっかと掴む。
少し痛みを覚えるくらいの力を入れて、引き剥がそうと。

離してやれ、なんて言われた。
怒っていることを隠し損ねた色の目をして。
元々隠し事なんて下手な癖に。
ばれてないとでも思ってるのかな。





「花白は俺よりタイチョーのことが好きなの?」
「なんでそうなるんだよっ」
「エー、だって」

助けて、って言ってるんでしょ?
好きでもない人に助けを求めるなんて、俺ならしないなァ。

したり顔で言葉を紡げば、見る間に顔を赤く染める。
馬鹿言うなよそんなことあるわけないだろ! なんて。
ああ、この子も嘘は苦手みたい。
真っ赤な顔で言われたって、誤魔化されるはずないのにね。





「いい加減にしろ。花白もだ」
「だって、こいつが!」
「……いつものことだろう、落ち着け」

ぽんぽんと軽く撫でられた。花白と俺の頭を、交互に。
赤い頬を更に染めて花白は下を向いてしまった。

「あーあ、いけないんだータイチョー」
「なっ、何がだ!?」
「解んないならいいよ。なー花白?」
「知らない!」

ぱっと腕を振り解いて、一目散に逃げて行く。
ああ、耳まで赤くしちゃってさ。
可愛いなぁなんて思いながら、立ち尽くすタイチョーを横目で睨む。
訳が解らないって顔をして、小さくなっていく背中を見てた。










可愛い可愛い弟と、からかうと面白いタイチョーと。
俺はどっちに嫉妬すれば良いんだろうね?











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